中堅・中小企業の賃上げを強力に後押し

平成29年度税制改正要望の中から、個人的に気になったものをピックアップしてお届けします。

あくまで要望ですので、実現するかどうかは、12月の税制改正大綱をお待ちください。

今回は、経済産業省が要望している所得拡大促進税制の見直しです。

引用文・図表の出典は「平成29年度 税制改正に関する経済産業省要望の概要」の20~22ページです。

財務省に提出された「所得拡大促進税制の見直し【PDF】」によれば、平成26 年度適用実績は以下のとおりです。

大企業・・・・・・4,075 件、1,688 億円
中小企業・・・74,186 件、 790 億円

現行制度

所得拡大促進税制は、3つの要件を満たした場合に、賃上げ増加部分の10%について税額控除を行うものとなっています。
所得拡大 現行制度

要望の趣旨

中堅・中小企業の賃上げを強力に後押しし、「成長と分配の好循環」を地域の中堅・中小企業にもたらすため、これら企業に対する所得拡大促進税制の支援措置を強化する(税額控除率の拡充等)。

今回の特徴としては、「中堅企業」という区分が新たに設けられている点です。


要望の内容

○中堅・中小企業の税額控除の倍増等を実現し、賃上げのための環境整備を強力に進める。

○大企業向け支援措置のあり方については、足下の賃上げ動向等を踏まえて所要の見直しを検討する。

要望では、2つの区分に分かれています。

中堅・中小企業

中堅・中小企業については、趣旨にあるように、より強力にバックアップするため、税額控除が倍増となります。
所得拡大 要望
具体的には、中堅・中小企業は、賃上げ増加額の20%を税額控除する仕組みとすることを要望しています。

実現すれば、10%から20%となるため、倍増となります。

なお、税額控除には、限度額がありますが、
中堅企業は法人税額×20%(現状維持)
中小企業は法人税額×40%(倍増)
となっています。

実務上は、この限度額で打ち止めになることが多いので、中小企業にとっては効果が大きいと考えられます。

中堅企業の定義は特に書かれていませんが、参考資料では、資本金1億円以上10億円未満の区分が想定されています。
労働分配率


1点、気になったのは、「※税額控除の対象に社会保険料の増加分を追加」とある点です。

さらっと書いてありますが、これは、会社負担分の社会保険料の増加分を反映できるようにということでしょう。
社会保険料負担

ただ、基準事業年度の社会保険料の会社負担分と適用事業年度の会社負担分を比較して、その増加分を反映するとすると、基準事業年度(平成24年度)の資料の確認が必要となりますね。実務的には気になるところです。

大企業

大企業については、継続して利用できるようにとなっています。

外形標準課税における所得拡大促進税制もありますが、こちらについては特に見直しなどの要望はなさそうです。


所感:賠償責任リスクの増加

所得拡大促進税制の適用漏れは、税理士賠償責任保険の事故事例でも取り上げられています。

今回の改正により、控除できる税金は、限度額しだいではありますが、2倍になる可能性があります。

改正前は100万円の控除だったものが、改正後は200万円になるということは、それだけ賠償責任リスクが金額的に増加することになります。

現在もそうですが、黒字法人の場合には、必ず所得拡大促進税制を検討し、適用漏れをなくすよう努力することになると思われます。

税理士事務所は、所得拡大促進税制の適用可否を判断し、適用できる場合には、3要件を満たすのか、より慎重に取り組む必要があるといえます。