NISAのさらなる普及のために積立NISAの創設を要望

平成29年度税制改正要望の中から、個人的に気になったものをピックアップしてお届けします。

あくまで要望ですので、実現するかどうかは、12月の税制改正大綱をお待ちください。

今回は、金融庁が要望している「少額からの積立・分散投資の促進のためのNISAの改善」です。

引用文・図表の出典は「平成29年度 税制改正要望項目[PDF]」の3~11ページです。

財務省に提出された「少額からの積立・分散投資の促進のためのNISAの改善【PDF】」も参考にしています。

現行制度

NISA(少額投資非課税制度)は、現在、平成35年までの期間限定で、毎年120万円を上限に上場株式等・公募株式投信の配当・譲渡益が非課税となります(非課税期間は最長5年間)。

現行のNISA


要望の趣旨

今回、3つの要望が出ています。

(1)「積立NISA」の創設(現行NISAと選択制)
(2)非課税期間(現行:5年間)終了時の対応
(3)投資可能期間(現行:平成35年まで)の恒久化

まず、1つ目の積立NISAは、若年層等が利用しやすくするために創設が要望されています。

NISAの更なる普及のため、手元資金が十分でない若年層等の利用を促進する観点から、少額からの積立・分散投資に適した「積立NISA」の創設を要望。

2つ目の非課税期間(現行:5年間)終了時の対応については、金融機関における事務負担を軽減させる等の観点から要望されています。

また、3つ目の投資可能期間(現行:平成35年まで)の恒久化については、長期の家計のける安定的な資産形成を可能とする観点から要望されています。


要望の内容

(1)「積立NISA」の創設(現行NISAと選択制)

最も実現性が高そうなのが、積立NISAです。

分散投資(投資対象の分散と投資時期の分散)により、中長期的に安定的なリターンの実現が可能に。
• 投資対象をグローバルに分散させることで、世界経済の成長の果実を享受することが可能に。
• 投資時期の分散(積立投資)により、高値掴み等のリスクを軽減しリターンの安定化が可能に。
⇒長期の非課税期間を有する「積立NISA」を創設することを要望
【積立NISA】
非課税投資枠:年間投資上限額60万円、非課税期間20年

投資対象商品:長期の積立・分散投資に適した一定の投資商品(例:バランス型ファンド、非毎月分配型ファンド等)

投資方法:あらかじめ締結した契約に基づき定期・定額で投資(積立)を行うものに限定

現行NISAとの関係:現行NISAとは選択的に利用可能とする

積立NISA

「年間60万円」というのは、現行のNISAの120万円×1/2からきているかと思われます。

非課税期間を「20年間」としているのは、資料によれば、20年の保有期間では、投資収益率2~8%(年率)に収斂(しゅうれん)されるため、長期分散投資のメリットを受けられるようにという意図のようです。
20年間投資

なお、金融機関のシステム対応にかかる時間を踏まえて、平成31年(2019年)から積立NISAを開始することを想定している、という報道もあります。


(2)非課税期間(現行:5年間)終了時の対応

【含み益の場合】

非課税期間が終了すると、口座開設者が希望した場合には、翌年の投資枠へロールオーバー(移管)することができます。

このとき、現行制度では、年間投資上限額(120万円)までしかロールオーバーができません。

そのため、含み益がある場合、例えば、130万円となっている場合には、120万円を超える10万円については払い出しがされてしまいます。

今回は、この年間投資上限額(120万円)を一定額超過している場合であっても、ロールオーバーを可能とすることが要望されています。


【含み損の場合】

現行のNISAは損にやさしくない制度で、2つの深刻な問題を抱えています。

1つ目は、他の口座(既存の特定口座や一般口座)と損益通算・損失の繰越控除ができません。

2つ目は、取得価格(当初の投資額)より低い時価に取得価格が変わってしまうため、100万円で投資して、100万円で売っても、払い出し時に時価が100万円を切ると、課税されてしまいます。

(例)
100万円-80万円(払出し時の時価)=20万円(課税対象!)


そのため、今回の要望では、払出し価額はそもそもの取得価額(100万円)とすることが要望されています。
ロールオーバー


(3)投資可能期間(現行:平成35年まで)の恒久化

「NISAの恒久化」については、以前から言われていることですが、

① 非課税期間(5年間)の恒久化
② 平成35年までの時限立法を恒久化

の2種類があります。

要望では、②の平成35年までの時限立法の恒久化が要望されています。


所感:複数のNISAを使いこなせるのか?

毎年のように改正要望と改正を繰り返すNISAですが、積立NISAができると、
・NISA
・ジュニアNISA
・積立NISA
の3種類ができることになります。

選択肢があることは一見するとよいことのようにも思えますが、複雑な制度になると、「いったいどれを選べばいいのかわからない」という選択の矛盾(選択肢が増えるほど人は混乱する)になるのではないかと、ふと思うところです。

なにしろ、長期投資をするツールは、他にも確定拠出年金(DC)もあり、こちらとの比較も重要です。

結局最後は、「自己責任」という言葉に収斂(しゅうれん)されるのでしょうか。。。